2022年05月25日

 ようやく政府も重い腰を上げてマスクを外すことを言い始めました。例によって明言を避けるような言い回しですが、そもそも我が国の方針は良く言えば慎重、端的に言うならば及び腰ですから、そのことを加味しますとマスクが必要な場面はかなり少なく、要するに原則マスクは不要ですよ、と捉えて良いでしょう。
 欧米諸国では、屋外はもちろんのこと屋内でもマスク着用の義務が撤廃されているところが増えており、街でマスクをしている人はほとんどみかけないようです。日本より感染者も重症者もまだ多い国々でこういう状況ですから、我が国でマスクの出番はもっともっと少ないのです。

 前回お話ししたように、新型コロナウイルス感染症そのものが変化しており、ワクチン接種の普及なども加わって、重症化もかなり少なくなってきていること、そういったことを考えますと、「マスクをしていたほうが良いだろう」という雰囲気が続いてしまうことが良くありません。「どうしても必要なときだけマスクを着用する」という考え方に変えていくべきでしょう。

 それよりも、マスクによるデメリットも多いことを忘れてはいけません。
 これからの季節は特に温度、湿度ともに上がりますから、熱中症を始めとして体調を崩してしまうリスクは非常に高いです。健康な大人でも苦しいのですから、お子さんやお年寄りはもっともっと苦しいと思ってください。ましてやマスクをして外で運動したり遊んだりすることは危険極まりありません。夢中になって遊んでいたら倒れてしまったというようなことが簡単に起こります。新型コロナウイルス感染症におけるお子さんへのリスクは流行初期からずっと低いわけですから、マスクをしていたほうが健康被害も大きいと考えてください。
 さらに、特に小さなお子さんにとって相手の「表情をみる」ことは、こころの成長に欠かせません。マスクをしている人ばかりというような状況は長い歴史の中でもありませんから、それがお子さんの発達にどういう影響があるのかは分かりませんし、少なくとも良いことはないでしょう。マスクをしているということは不自然であるということを思い出しましょう。
 周りの大人達がマスクをしていれば、子供たちもマスクを外しづらくなってしまいます。未来を担う子供たちのためにも「マスクは外して良いんだよ」という思いを込めてマスクを外しましょう。どうしても必要なときだけマスクを着用すれば良いのです。

 そもそも感染予防や体調管理で一番大切なことは今も昔も「心身ともに健やかでいること」です。マスクに拘って健康被害が出てしまうようであれば、それはもはや害と言えます。マスク着用はあくまでも感染予防の手段の一つに過ぎません。
 「なんとなく」「していたほうが良さそう」「周りの目が気になる」といった理由でマスクをするのはやめましょう。マスクが目的になってしまっては本末転倒です。それより身体も心も元気でいられることを考えましょう。

 規制が続き、ずっと我慢を強いられて心が荒んでいる方が多いと思います。現状を考えれば我慢を続ける時期は過ぎたと考えてよいでしょう。当たり前ですがマスクをしていれば表情は見えません。残念なことに何年もマスクで隠された顔しか見えず、人々の笑顔を見ていません。街に人々の笑顔があふれる夏を迎えましょう!

たかおか耳鼻咽喉科クリニック 院長 高岡卓司