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2025年10月06日
blog : 絵本のすすめ ①
本を読むことは人の成長や人格形成に欠かせません。なかでも絵本は、物心がついてから初めて目にする本です。子どもたちがたくさんの良い絵本と出会うことは、心の成長にとって極めて重要なことです。
絵本をたくさん読んで少し大きくなったら、今度は本に挑戦です。文章が多い絵本もあれば、挿絵が豊富な本もあります。絵本に馴染んできた子どもたちには、挿絵が少ない本に最初は怖気づいてしまうこともあるでしょう。
絵本や本を本棚に並べただけでは子どもたちは読みません。親御さんが読み聞かせたり一緒に読んだりすることで段々好きになっていくのです。親に読み聞かせてもらったり、一緒に読んだりした絵本のことは、一生大事な思い出として残ります。そして大人になったときには、自分が親にしてもらったように子どもたちに読んで聞かせてあげるようになるでしょう。
もちろん大人にとっても絵本は素晴らしいものです。今まであまり絵本に触れてこなかった方もぜひ絵本を手にとってみてください。新しい世界が広がります。
今回は、たくさんの絵本の中から、ぜひ手にとってもらいたい作品を二作ご紹介します。
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『スーホの白い馬』
大塚勇三 再話・赤羽末吉 画
名作中の名作です。モンゴルの民話を元にしたお話に、赤羽末吉さんの柔らかくあたたかな素敵な画がよく合います。赤羽さんは日本の昔話の絵本で多く画を描いていますが、この絵本でも素晴らしい画を見ることが出来ます。
羊飼いの少年スーホの悲しくも優しい物語に、草原を吹く風や四季を感じられるあたたかい画が寄り添って、読み手をモンゴルの草原にいざないます。ページを捲ったときに現れる色調や画調の変化の美しさが物語の展開を感じさせてくれます。
つらくても力強く生きていくスーホの姿に心が強く動かされる素晴らしい絵本です。子どもたちにとっても、ただ楽しいだけの物語だけではなく、生きることの喜び、つらさ、悲しさや、逆境を乗り越える力強さや忍耐を学べる物語が大切なのです。
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『こすずめのぼうけん』
ルース・エインズワース 作・石井桃子 訳・堀内誠一 画
原作はイギリスの作家さんの物語です。訳者は『ノンちゃん雲に乗る』の石井桃子さん。画の堀内誠一さんは、もともとグラフィックデザイナーとしてananを始めとした数々の雑誌の立ち上げに携わった人ですが、絵本に注力するためにフランスに移住した経歴を持っています。堀内さんの絵本では『ぐるんぱのようちえん』が有名ですが、私にとっての白眉はこの『こすずめのぼうけん』です。堀内さんは納得出来る画が描けるまで何度も何度も描き直したそうです。
飛び方を覚えたばかりのこすずめが、ついつい遠くまで飛んでいってしまい…、というお話です。風景は暖かく柔らかで、こすずめにはこう見えているんだなあと感じられる画です。鳥たちのタッチは背景と少しだけ違ってはっきりとした描写です。こすずめや鳥たちの心や人となり(鳥となり?)が読み手に伝わってくるようで、ページを捲るたびに、楽しそうだったり、不安そうだったり、安心したり、こすずめの表情が本当に素晴らしく描かれています。
こすずめと一緒に「ぼうけん」しながら、子どもが世の中を知って成長していく様を感じとれる絵本です。
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絵本や本を読むことは、人が自分の頭で筋道を立てて物事を考える理性的かつ論理的思考を獲得するために必要不可欠な体験です。
スマートフォンやタブレット端末で動画などを観ていてもそれは身につきません。むしろ論理的な思考や冷静な判断が出来ず、感情のコントロールが難しくなる傾向があるとも言われています。
子どもたちは大人が何をしているかよく見ています。大人たちがスマートフォンの画面をずっと見ていれば、子どもたちもそれが当たり前と思ってしまいます。
子どもたちには絵本や本を読む権利があります。大人たちがそれを奪ってはいけません。これからの世界を担うこどもたちのために、みなさんもスマートフォンを置いて毎日お子さんと絵本や本を一緒に楽しんでみてください。
たかおか耳鼻咽喉科クリニック 院長 高岡卓司
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