2026年01月21日

blog : 絵本のすすめ ③

 児童文学のみならず日本文学に言及するにあたり、谷川俊太郎さんを欠かすことは出来ません。谷川俊太郎さんの本には日本語の持つ美しさや面白さ、多様性、幅広さが沢山詰まっています。さらに日本語をきちんと用いる大切さも伝わってきます。
 なかでも子供向けの本には日本語の持つ楽しさ、不思議さがぎっしりです。大人ももちろん楽しめるのですが、子供にしか分からない、言葉の持つ楽しさ、面白さがあるのでしょう。谷川俊太郎さんの絵本は、お子さんに読んで聞かせるのにぴったりです。

『ことばあそびうた』
谷川俊太郎 詩・瀬川康男 絵 (福音館書店)

 日本語という言葉のもつ多様性から生まれる面白さと不思議さがどのページからも伝わってくる絵本です。文字がすべて瀬川康男さんの絵の中に組み込まれているので、絵本というより絵巻や絵画のように感じます。松谷みよ子さんの『いないいないばあ』の絵も瀬川康男さんの作品ですが、『ことばあそびうた』の絵はまた違った強烈な個性を放ち、どこか懐かしさを感じる不思議な異世界に連れて行ってくれます。全体をゆっくり眺めてもよし、隅々まで細かく見るのもよし、とにかく飽きません。ただ、ことばあそび「うた」ですから声に出して読むことで、より一層言葉のもつ響きとそこから生まれる面白さがはっきりと分かります。この絵本はお子さんが黙って読むよりは、親御さんが読んで聞かせてあげるのが良いでしょう。

『けんはへっちゃら』
『とおるがとおる』
谷川俊太郎 作・和田誠 絵 (あかね書房)

 谷川俊太郎さんが子どもに向けた本を書きますと、日本語を自由自在に操って子どもの心を鷲掴みにします。中でもこの2冊は白眉と言えるでしょう。私も幼少期に何度も読みましたが、数十年経って読み返しましたら、ほとんどの文章が記憶に残っていました。それだけ強烈に子どもの心に刺さるのでしょう。台詞一つで登場人物の感情、表情が伝わってきて物語の世界に引き込まれるのです。
 2冊とも主人公はちょっと変わった男の子です。お母さんに「変な子ねえ」なんて言われているかも知れません。でも本人は至って真剣に毎日生きています。子どもにとって同じような日なんてありません。毎日が驚きと冒険です。子どもが生きていくのは大変なのです。頭も身体もフル回転です。そんな日常を男の子の淡々としたことばで綴っています。それが何とも言えず面白いのです。日本語ということばとその響きの面白さ、楽しさが、そのまま物語の中の人々の面白さや楽しさを際立たせています。大人になってからでは分からない、子どもの感性でしか捉えることのできないものがこの本にはあるのです。

たかおか耳鼻咽喉科クリニック 院長 高岡卓司

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