開院から10年 次の10年に向けて
2022年1月
2011年11月に当クリニックを開院してから丸10年が経ちました。10年間、大過なく診療を続けられたことを有り難く思っております。
言わずもがなではありますが、この10年間の出来事で特筆すべきは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大でしょう。日本の医療全体に大きな影響を与えた出来事ですが、私も医療や診療のあり方について改めて深く考えることが出来ました。
当クリニックでもいわゆる受診控えの影響は少なからずありましたが、怪我の功名とでも言いましょうか、診療に余裕が生まれ色々な事に気付くこともできました。開院以来、患者さんご自身の身体の状態や病気についてしっかり理解して頂けるように、分かりやすく丁寧に説明することを心がけて来ましたが、場合によっては十分に伝わっていないこともあったのではないかとも考え、患者さんにご自分の状態を理解して頂けるように今までより更に一層しっかり説明するようにしております。
COVID-19の影響をあまり受けなかった点もありました。当クリニックでは開院当初からインターネット受付を導入しております。これは、直接来院頂いた患者さんも、インターネットで受付をした患者さんも、院内での待ち時間をなるべく同じにすることでスムーズな受診が出来るようにするための取り組みです。結果として院内での待ち時間が比較的短時間で、待合室でいわゆる「密」になることがほとんどなく、COVID-19の感染拡大後も安心して受診していただけています。
現時点ではCOVID-19の感染拡大はまだ収束しておりませんが、患者さんがいつでも安心して受診出来るようにこれからも努力を続けていきます。
もう一つ、これは患者さんにはピンとこないことかも知れませんが、勤務医を10年余り、開業医を10年続けてきて、勤務医と開業医のあり方についても考えることが色々あります。勤務医も開業医も、もちろん根本的には変わりません。しかしながら最先端治療から日常診療までを同じ施設ですべて行うことは、設備や人的資源、時間などを考えますと無理がありますから、大学病院と市中病院と診療所で役割分担をすることになり、それに伴って医師の診療に臨む姿勢も微妙に異なってくるのではないかと思います。さらに医師だけではなく患者さんが求めていることも、どこを受診するかによって微妙に違うのではないでしょうか。簡単に表しますと、開業医とは患者さんにより身近と言いますか、今日明日なんとかしてもらいたい、そういった細かいところに手が届くようなことが開業医の役目なのかも知れません。
そして日常診療に携わることが多い開業医だからこそ、万が一つの異常を見落とさないことが極めて重要だと考えています。患者さんのふとした言葉や動作でも何かおかしいのではないかと気付くこともあります。いつも診ている患者さんを、いつも通りの診察だけで終わらせないよう、また患者さんの訴え以外のことに常に注意を払うように診療を心がけています。今まで大学病院や数箇所の市中病院に勤務し、その後開業医を続けてきて、そういった事が自分の身に染み付いていることをはっきりと意識できるようになったと感じています。
とはいえ、開院してから「まだ」10年しか経っていないわけで、これからさらに地道な努力を続けていかなければと思っております。診療所、クリニックとは、患者さんが少しでも困っていることや心配なことがあればすぐ受診できる場所であるべきだと考えております。どうして通院した方が良いのか、あるいは病気が治ったこと、心配ないことを、患者さんと一緒に検査結果や画像を見ながら病状を共有し、丁寧にお話しすることで、患者さんがご自分の状態をきちんと理解出来るように、真面目に日々努力を続けておりますので、これからもよろしくお願いいたします。
たかおか耳鼻咽喉科クリニック 院長 高岡卓司